内科・消化器内科
まつだ内科医院
鳥取県鳥取市叶284-1

TEL: 0857-38-4777

今月のカルテ

2025年11月

40歳代・男性、30歳代中頃から職場の検診で高血圧と肝機能異常を指摘されていました。2025年5月の検診では、従来の高血圧と肝機能異常に加え、血糖高値・コレステロール高値を指摘され、同年7月来院。体重78.5kg・BMI 25.8・腹囲95cm、血圧175/110、肝機能検査は ALT 141、γ-GT 67、糖尿病の指標ヘモグロビンA1c は5.8・空腹時血糖85、LDL(悪玉)コレステロール154、HDL(善玉)コレステロール63、中性脂肪90、超音波検査では肝臓への著しい脂肪蓄積と脾臓の腫大(肝臓が壊れつつあることをあらわしています)が見られ、脂肪肝から脂肪肝炎への進行を示唆する所見でした。メタボリック症候群予備軍該当、脂肪肝に高血圧を併発した状態(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患=MASLD )と診断、動脈硬化進行に伴う心血管イベント(心筋梗塞・狭心症・脳梗塞など)のリスクが高く、同時に肝硬変・肝がんへの進展リスクが高い状態と考えられます。20歳代前半の体重は58kg前後であったようですが、2年前の検診では69kg・腹囲83.5cm、昨年の検診では74kg・84.5cmと着実に体重・腹囲が増加し、今年の検診では一気に加速したようです。

MASLD対策として、ガイドラインに従い、まず7%(5.5kgに相当)の減量をめざして、カロリー制限と有酸素運動・レジスタンス運動を心がけるよう相談しました。3か月後、体重は75.5kgと3kg減、血圧は140/85に低下、さらに目標体重をめざして減量を進めるよう相談し、次の3か月後には肝機能検査などを再検予定としています。

(一言メモ) メタボリック症候群は腹囲の増加=内臓脂肪の増加に糖尿病・高血圧症・脂質異常症のうち2項目以上が併存した状態を言い、1項目のみを伴う場合には予備軍該当としています。一方、MASLDは、「内臓脂肪の増加」からさらに踏み込んで、脂肪肝に肥満や糖尿病・高血圧症・脂質異常症などがある場合をいい、肝硬変・肝臓がんへ進行するリスクが高いと同時に心血管イベントの発症リスクが高い状態と考えられています。

2025年10月

70歳代・女性、30歳代中頃から糖尿病といわれていたようです。2025年2月、検診の際、肝機能異常と血糖高値を指摘され、同年4月来院。体重43.5kg・BMI 18.1、肝機能検査は ALT 42、γ-GT 56、糖尿病の指標ヘモグロビンA1c は6.8、LDL(悪玉)コレステロール121、HDL(善玉)コレステロール50、血液検査からは、やせ型の方で糖尿病とわずかな肝機能異常がみられました。早速超音波検査を行ってみると、肝臓は著しく形をくずして、なめらかであるはずの表面は凹凸を呈し、脾臓の腫大(肝臓が壊れつつあることをあらわしています)もともない、既に肝硬変になっていました。脂肪肝所見はまったくみられず、糖尿病の方では要注意の膵臓には異常所見はないようでした。CT撮影でも同様に肝硬変所見を認め、肝臓がんや膵臓がんの併発はみられませんでした。

肝硬変になった原因は何でしょうか。現在はやせ型ですが、10年ほど前までは体重は60kg(身長が現在と同じとみなして、BMI 24.9)前後の小太りタイプであったようで、2007年当時の検診で ALT 132、ヘモグロビンA1c 6.5の記録がありました。おそらくは、当初は、脂肪肝に糖尿病を併発した状態(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患=MASLD )であったものが、長い年月をかけて肝硬変へと進行するにつれて肝臓内に蓄積していた脂肪がなくなり、あたかも焼け跡のように肝臓のダメージのみが残った状態と考えられます。

対策として当面は、糖尿病および肝硬変に対する栄養管理と肝臓がん・膵臓がんのスクリーニングとなります。

(一言メモ) MASLDは、脂肪肝に肥満や糖尿病・高血圧症・脂質異常症などがある場合をいい、肝硬変・肝臓がんへ進行するリスクが高いと同時に心血管疾患の発症リスクが高い状態と考えられています。脂肪肝の段階での早期の治療が重要と考えられます。

2025年9月

肝臓病の事例をご紹介します。一緒に考えてみましょう

50歳代・男性、検診の際、肝機能異常と血糖高値・コレステロール高値を指摘され、2024年6月来院。
体重93.5kg・BMI 30.5、肝機能検査は ALT 70、γ-GT 100、糖尿病の指標ヘモグロビンA1c は9.2、LDL(悪玉)コレステロール179、HDL(善玉)コレステロール57、超音波検査では著しい脂肪肝所見および脾臓の腫大(慢性肝炎が進行中)を認め、CT撮影で膵臓がんや肝臓がんが無いことを確認。

脂肪肝に糖尿病および脂質異常症を併発した状態(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患=MASLD )と診断、肝硬変・肝臓がんへ進行するリスクが高いと同時に心血管疾患の発症リスクが高い状態と考えられました。
まず7%(6.5kg相当)の減量を目標とし、糖尿病薬・コレステロール治療薬それぞれ1種類の内服を開始しました。

約1年後の2025年7月、体重82.0kg・BMI 26.8と目標値を大きく上回る11.5kg減、肝機能検査は ALT 18、γ-GT 30、ヘモグロビンA1c は6.8、LDLコレステロール91、HDLコレステロール54、超音波検査では脂肪肝所見が軽減していました。当初改善をめざしたすべての項目で効果を認め、リバウンドに注意しながらさらに減量をこころがけていくよう相談しました。

(一言メモ)
ダイエットが有効であった例です。いずれは内服薬の減量も可能になりそうです。
MASLDの方すべてがこのようになることはあり得ませんが、ダイエットがきわめて有効であることを証明した一例と考えます。